複合芸術研究科の広報誌『TRANS 04』を発行しました。
本記事末尾にてPDFデータも公開しております。ぜひご覧ください。
なお、これまでに発行した『TRANS』のバックナンバーに関する記事も下記リンクよりご覧いただけます。
『TRANS 01』
『TRANS 02』
『TRANS 03』
Editor’s Note
映画『プラダを着た悪魔2』(2026年)でもっとも印象深かったのは、メリル・ストリープ演じるミランダ・プリーストリーをめぐる環境の劇的な変化でした。彼女が編集するファッション誌『ランウェイ』は、ご多分に漏れず紙媒体としての存続の危機に見舞われているばかりか、彼女の代名詞ともいえる毒舌ですら、昨今かまびすしいポリティカル・コレクトネスという無形の圧力によりたしなめられる始末。この20年のあいだに悪魔の剛腕が斜陽に染まってしまったようで、えも言われぬ淋しさを禁じえませんでした。
ただ、王国の落日はファッションやメディアといった文化産業に限られているわけではありません。それは大学という教育研究機関にも影を落としています。その土地の大学で研究に邁進しているにもかかわらずなお「地域貢献」を求められる過剰な要請と、精神保健の専門家ではない研究者に学生の心のケアを強いる暴力性は、「正しさ」を隠れ蓑にしながら研究者を内側から蝕んでいる点で、明らかに表裏一体の関係にあります。資本主義の爛熟に伴い、世界のあらゆる局面において空洞化が進行しているとすれば、大学はまちがいなくそれと対峙するフロントのひとつなのです。
そうしたなか、逆境をいくども乗り越えてきたミランダのように、本誌もまた、口あたりのよい表面的な正義や即時的な成果を求める資本主義に惑わされることなく、あくまでも信頼に足る言葉の実質を生産することを堅持します。「当事者性」を巡って交わされた濃密きわまる応酬を読めば、学生と教員が真摯に向き合いながら協働で言説空間を生成しうる、本研究科ならではの「魔性」の一端を垣間見ることができるでしょう。
もとより、本誌を閉鎖的な共同体とするつもりは毛頭ありません。むしろ、その門戸は大きく開かれています。ここを突破しようとする主体性と自発性こそ、複合/越境という冒険のはじまりなのです。
『TRANS』編集長 福住 廉
