先生にインタビュー

大谷有花 現代絵画(油画)・現代美術

これまでの活動を教えてください。
神奈川県の相模原市出身です。多摩美術大学では絵画を専攻していましたが、インスタレーション作品なども制作していました。大学院に入った頃から本格的に絵画制作に専念し、2001年には「昭和シェル石油現代美術賞」で本江邦夫審査員賞を、2003年には上野の森 美術館の「VOCA2003」で、VOCA 奨励賞を受賞しました。2003 年に大学院を修了してから今日まで、現代美術家として、主に絵画( 油画)作品を制作し、ギャラリーや美術館などで作品を発表しています。2010年には、美術評論家の高階秀爾さんにご推挙いただき、 毎日新聞社主催の「絹谷幸二賞」の候補者となり、審査の結果、大賞である絹谷幸二賞を受賞しました。

どんな教育がしたいですか?
私自身、大学では絵画を専攻していましたが、他のジャンルにもとても興味がありました。本学では5専攻の中から自分の進路を選択できるわけですが、私の所属するビジュアルアーツ専攻においては、専攻の中でさらに 7つのジャンルを横断的に学べるので、これまでにないアート表現を生み出すことすら不可能なことではありません。どんなことでも積極的に学びたいという意欲溢れる学生諸君を、美術教育の既成概念にとらわれることなく、創造的に バックアップしていきたいと考えています。

秋田公立美術大学のオススメポイントを教えてください。
本学は、意欲さえあれば、実に様々なことを学べる美術大学です。学生たちには若さという特権を最大限に活かして、いろんなアートのジャンルに、積極的にチャレンジしてほしいと願っています。

受験生にメッセージをお願いします。
これまでにないアートを自らの手で生み出してやるぞという血気盛んな「美の冒険者」を求む!

 

今中隆介 インテリアデザインプロダクトデザイン

今中先生は元プロダウンヒルレーサー兼デザイナーという異色の経歴をお持ちです。当時はどんな生活でしたか?
(株)イリアに所属しインテリア設計をしていました。フリーハンドで図面を描く時代です。通勤に使っていたインラインスケートで夜中遊んでいて利き手を骨折しました。会社に行くとバカ!と怒鳴られ、放置されていたマッキントッシュを覚えCADを導入しました。
MTBダウンヒルは同僚から誘われて始めました。未経験にもかかわらず全日本シリーズに参戦し初めてのレースで120人中22位になり、これはいけると思ってしまいました(笑)。
終電までデザイナーとして仕事をしながら、練習もせずに週末レーサーを続けていました。翌年にはトップカテゴリに上がり、ランキング14 位になった年にプロ契約の話がきました。デザイナーとしてもそのころ独立し、年間ランキング7位になりましたが翌年はマシンに恵まれず順位も落ち、年も年だったのでデザイナーに専念することにしました。今思うとちょっと悔しいですね。

ダウンヒルレースの経験はプロダクトデザインに生かされていますか?
違うことに思われるかもしれませんが、この二つに境目を感じたことはありません。レースで結果を出すためにはイメージや段取りが大切です。スタートを切れば後は作業です。スタートまでに試行錯誤や段取りをしっかり終わらせれば結果が出ます。これはデザインと同じなんですね。今でもどんな仕事を頼まれても同じ姿勢です。

どんな教育をしたいですか?
知識の使い方や考える力を養いたいです。事象に対して関連性を見いだせる力を身に付けてほしいです。ダウンヒルとデザインが同じように、ひとつを極めると他に応用できることに気がついてほしいですね。

学生に期待することは?
製品の性能の高さにあるように、工夫や繊細さが日本の特長です。これからの世界は大量消費社会が終わっていく中で、日本の価値を示す時代になると思います。義務教育までは考える力を付ける教育は少ないと思います。美大というのは創造力やイメージ力を育てるところです。過去の経験や実績が当て嵌まらない時代です。矛盾するようですが未来を想像して過去の自分をあっさり棄てるぐらいの覚悟と、同時に自分の過去を冷静に見直す視点が必要です。

 

高嶺格 パフォーマンス・インスタレーション

就任していきなり、ドイツに一年間赴任することになりました。ドイツではいかがですか?
ベルリンのアーティストレジデンスに招聘され1年間いきました。先に秋美に就任する話が進んでいたので、はじめは無理だと思ったのですが、大学が私の活動を応援してくれて渡独出来ることになりました。仕事で海外にいくことはよくあるのですが、こんなに長期は初めてでした。
家族連れなので、アーティストとして仕事でいくのとは全く体験が違います。子供の学校のことなど居住するための手続きがたくさんあり、おまけに家族がベルリンで1人増えて6人の大所帯になったので、生活のための時間がたくさんかかりました。ドイツでひとつ象徴的だったのは、地図をみるとFKKって書いてある湖がいくつかあるんです。調べてみたら日本語では「自由身体文化」と書いてある。どうやらヌーディストビーチを指すらしい。名前に興味を引かれて行ってみたのですが、拍子抜けするくらいにのんびりした場所でした。
湖を囲んで、本当に純粋に、思い思いの休日を過ごしに来ているような風情です。全員が裸というわけでもなく、着ていたり着ていなかったり自由。注意書きの看板もなにもありません。とても静かで、もちろんエロとは無縁です。
FKKはもともと思想的な運動なのですが、僕にはここが本当に思想的な場所に思えました。参加する人が、自分たちでルールを作り、連帯することで自分たちの権利を守る。自分の意志で自分のライフスタイルを決定し、個々の考えやプライバシーは最大限に尊重される。ここにドイツ人の真骨頂を見た気がしました。裸になるとかならないとかは法律で縛られる対象ではない。意識が先行してそれに条例や法律がついて行くというのは健全なあり方ですね。こういうところは日本は本当に学ばなくちゃいけないと思います。

アートを目指す学生や受験生へのメッセージをお願いします。
目標の低い学生は来なくていいです。

 

井上豪 東洋美術史

これまでの活動の概要を教えて下さい
大学で東洋美術史を専攻していて、奈良の仏像や中国の古代美術について勉強していたんです。大学院生のとき、大学のシルクロード調査隊に参加することになって、それがきっかけで北京大学に留学。あちこち遺跡を飛び回ってました。帰国して復学、助手になって、その後気が付いたら秋田にいるわけです(笑)。まあ活動というと論文を書いたり学会発表をしたりが主ですが、今でも年に一度は海外へ調査に出かけてます。

どんな教育がしたいですか?
「興味を持つ」ということ。とにかく何にでも興味を持ってほしいです。で、それを本気で面白がる。どんなにくだらないことでも、本気でやったら凄いものができますよ。そういうのを自慢しに来てほしいですね。くだらない興味ならちょっと負けない自信があるから(笑)。教育っていうと何だか堅くなるけど、要はそういうものじゃないかな。

秋田公立美術大学のオススメポイントを教えてください。
明るくて自由なところ。新しい創造っていうのはある意味「非常識」ってことですから、大概のことは許される世界です。バカなイタズラをすると逆に先生に褒められたりして。でもそれが面白くなければ叱られるという、イタズラも真剣勝負です。学生のうちは好き放題「新しい」ことをやってほしいですね。

受験生にメッセージをお願いします。
他の誰でもない唯一の自分というのを作り上げること、何よりこれが大事だと思います。世界中から求められるような、貴重な自分を見つけに来てください。たぶんキャンパスのどこかに落ちていると思いますよ。

 

石倉敏明 芸術人類学/神話学

研究領域について教えて下さい。
私の研究は、「芸術人類学」と「神話学」という分野です。芸術人類学は、芸術を通じて人とは何かを考える学問です。神話は人類最初の哲学、まだ宗教や科学がない時代のはじめのメディアと言われています。神話を研究すると文化のルーツがダイレクトにわかるのです。両方研究することで文化のルーツを知りたいと思っています。
いわゆる「これまでの美大」で教えてきた芸術理論というものは、ルーツから切り離された人間を前提として語られてきました。しかし、考えてみると近代芸術がはじまる前から人間はものを作り、広い意味での芸術活動を行ってきたのです。幸い秋田という土地は、芸能や祭り、昔話、民謡、季節行事など、ルーツにはこと欠かない場所ですから、この場所を基盤として芸術を根本から見直したいと思っています。

どういう教育をしたいですか?
インターネット普及以前の価値観では、秋田は最新流行のアーティストの作品をみたり、アート市場の流行を追いかけるには不向きな場所と言われました。ですがそういう流行を追いかけるだけのアートはもう、過去のものです。幸い秋田では、大学や美術館の外に出れば豊かな民俗や自然、例えば野生的な、去勢されていない祭りや文化に出会うことができます。クマやカモシカやハタハタといった人間以外のキャラクターにも出会う機会が沢山あります(笑)。これは世界的にみてアートやクラフト、デザインのポジティブな条件だと確信しています。ここにしかない限界風土に存分に触れてもらって、他の誰にも作れないような作品を生み出してもらいたいです。

受験生に一言
教科書や先生の言っていることを鵜呑みにしないで、自分で考え、ものを作り、世界を切り開けるような人間になってください。そのためのサポートはここの教員はだれも惜しみません。

 

小杉栄次郎 建築・都市設計

これまでの活動の概要を教えてください。
私は大学の建築学科を卒業後、建築家・磯崎新さんのもとで建築設計の仕事を学びました。10年ほど努めた後に自分の設計事務所を立ち上げ設計活動を続け、秋美の開学から大学教員としてのキャリアをスタートさせました。磯崎アトリエでは国内外のプロジェクトを通して、様々な文化や歴史に触れることができました。自分の設計事務所を立ち上げてからは、20世紀的な「機能」や「フォルム」といった問題だけではなく、「地域性」や「素材」に着目し設計活動をするようになりました。最近では、日本の伝統的建築素材である「木」、「木造建築」の可能性を模索しています。最新の技術とデザインをどのように結びつけて、未来に残す建築をつくるか。このテーマを大学で引き続き研究していく予定です。

どんな教育がしたいですか?
建築教育は本来、社会的事象を広範囲に捉えることが求められます。その上で現在の状況を考察し、未来の姿を創造することが大事だと私は思っています。そのためには複雑に絡まった事柄を丁寧にひも解き、深く思考する時間も必要です。しかし、現在の建築教育は資格取得のためのカリキュラムが圧倒的なボリュームとなっており、社会や地域にかかわる問題をじっくりと調査し深く考えることに時間を割くことが難しくなっているようです。本学の景観デザイン専攻では、そうした社会や地域の問題に対して学生が向き合う時間をしっかり設けて、自らが見つけた課題を乗り越える力をつけ、持続可能なまちづくりに関わることができる人間を育てたいと考えています。

秋田公立美術大学のオススメポイントを教えてください。
秋美は地域に好意的に受け入れられている大学で、専攻の授業でも地域と関わりながら取組むものが多くあります。地域のリアルな声を参考にしながら、地域の問題と向き合い、未来の街を提案するという実践的な授業を経験することができます。また、全学生数に対する教員の人数が多く、きめ細かな教育を受けることができるというのも、オススメポイントの一つです。

受験生にメッセージをお願いします。
今の街の風景を当たり前だと思い込んでいる人が多くいますが、そうではありません。街の様子は20年もすれば、良くも悪くも大きく変わりますし、変えることができます。現状を諦めの気持ちで受け入れるのではなく、その街らしさとは何かを考えて未来をつくる、そういう意欲のある受験生に是非来てほしいです。

 

森香織 本友禅染

これまでの活動の概要を教えてください。
現在、ものづくりデザイン専攻で染色を担当していますが、染織の勉強を本格的に始めたのは大学3年生になってからです。4年生になり本友禅染を専門に学び始め、それから大学院・研究生・助手と屏風や平面作品を中心に制作・発表してきました。大学を離れてからは、アパレルブランドとのコラボレーションによるコレクションの発表や、バッグやストールの制作など、「使う・身につける」ことを意識したものづくりも行ってきました。
ここに来てからは、本友禅染以外にも型染での制作や野外でのインスタレーション作品など、今まで未経験だったものにも取り組んでいます。

どんな教育がしたいですか?
自ら考え、決定し、行動(制作)する。これを身につけて欲しいので、作品のテーマや制作スケジュールは出来るだけ学生自身に決めて貰います。「与えられたことをこなす」というよりは、「自分の課題は自分で見つける」というような力がつくように指導したいと思っています。

秋田公立美術大学のオススメポイントを教えてください。
作品を制作する環境はとても揃っていると思います。教室や工房の時間外使用の時間も多く取られているので、課題以外での制作も十分に出来ると思います。専攻間の垣根が低く、他専攻の先生にも気軽に相談できることもこの大学の特徴だと思います。

受験生にメッセージをお願いします。
秋田は四季の変化が激しく自然が劇的に変化します。春から秋にかけての木々の緑や空の色の変化、冬のすべてが白一色で覆われた景色など、その時々で様々な美しさを見せてくれます。また季節の食物も、春はアイコ・シドケ・コゴミなどの山菜、初夏はみずやじゅんさい、夏は岩牡蠣、秋は新米や茸類、冬はハタハタや真鱈など、たいへん変化に富んでいます。その他にも独特な食文化が多く、初めて見るものも多いと思いますが是非味わって貰いたいです。また季節ごとの伝統行事も多く、夏の竿燈祭りや西馬音内盆踊り、冬のかまくら祭りや上桧木内の紙風船など、興味深いものばかりです。秋田という土地特有の生活文化を大いに体験することで、独自の感性を築いて貰いたいと思います。
大学の勉強も大切ですが、家と学校の往復で4年間を過ごすのはもったいない! 是非充実した学生生活を送ってください。